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木の葉っぱが屋根になっている小さな広場のベンチに、膝を抱えてちょこんと座っているしず。
小さくなった背中が、遠くから離れたここからでも分かるほどに震えていた。
とりあえず彼女の前にあるブランコに行って、右目の端に彼女を映したら、俯いてて顔が見えない。
「…っ…ひっ…」
嗚咽する声が、腕の隙間から漏れる。
なんでだろう。
悲しさが、伝染したのだろうか。
胸が締め付けられるほどに苦しい。
あの美咲にどんなひどい事を言われても、泣いたりしなかったのに。
あの優しい母親に怒られたのだろうか。
話しかけたいけど、理由も知らなければ、自分が誰なのかすらも知られていない。
「……っ…もう…いや……」
絞り出したような哀しい声に、小刻みに震えている肩がいっそう痛々しい。
思わずそう嘆いてしまうほど、今のしずは傷ついている。
こういう時って、どうしたらいいんだろう。
どう慰めたらいいんだろう。
『…っ…も、勉強嫌い…っ』
『もう泣くなって。次また頑張ればいいだろ』
『俺…っ、兄ちゃ…みたいに…かしこくないっ…』
『はいはい、もう泣かないの』
撫でられた大きくて温かい手。
いつも唄ってくれるあの曲は、鎮静剤のように心を穏やかにしてくれた。
…弱い頭で思いつくのは、もうこれしかない。
どうせしずと俺しか居ないんだ、行けっ。
「あー、ショックだなぁー!」
突然の大声にビクッとなる彼女を確認して、すぐに視線を戻して。
またすぐにチラッと見たら、潤んだ瞳をまん丸くしてこちらを凝視してる。
何この人、って思ってるのがちくちくと伝わって来る。
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