抱く、壮大たる夢

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「今日は嫌なことがあったなぁ!本当嫌だなぁ!」 …我ながら、本当に恥ずかしい。 こんな大声で独り言を言ってる奴なんか、見たことがない。 「そうだ!あれを唄おっ、すぐに元気になるんだったっ!」 …ああ、俺本当に何してんだ…。 恥ずかし過ぎて、もうしずに目を向けられなかった。 それでも、やっぱり泣き止んで欲しくて。 「ワーイ ドゥ バーツ サドンリ アピー ん~ん~ん~」 出だしの部分しか、覚えてないけど。 あとはもう、鼻歌になってしまうけど。 しず、泣かないで。 お願いだから、泣かないで。 じゃなきゃ、俺まで、…泣きそうになる。 拙い歌を最後まで唄い切り、静まり返る公園。 「うわー、不思議!俺、超元気になったーっ!」 音楽の授業でさえ、みんなの前でこんな風に唄ったことはない。 一人で明るく言ってみたけれど、恥ずかしさはピークを迎えている。 泣いてはもう、いない、よな…? いつの間にか止んだ泣き声に、押し寄せてくる緊張感。 鉄のチェーンを握る力が強くなっていた。 深呼吸を一つしてから、恐る恐る彼女の方に顔を向けたら。 ……っ。 脳が、揺れた気がして。 咄嗟に、逸らしてしまった。 あの百貨店の時と同じ、花が綻ぶような、明るく眩しい笑顔。 瞬く間に小刻みに鳴り出す、モールス信号のような鼓動。 身体を包み込む、癖になるほど心地の良い、あの時の高揚感。 この不思議な現象に困惑しかできなくて、でも胸の奥は怖いくらいに煩くて。 …一目散に、逃げた、のに。
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