58人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日は嫌なことがあったなぁ!本当嫌だなぁ!」
…我ながら、本当に恥ずかしい。
こんな大声で独り言を言ってる奴なんか、見たことがない。
「そうだ!あれを唄おっ、すぐに元気になるんだったっ!」
…ああ、俺本当に何してんだ…。
恥ずかし過ぎて、もうしずに目を向けられなかった。
それでも、やっぱり泣き止んで欲しくて。
「ワーイ ドゥ バーツ サドンリ アピー ん~ん~ん~」
出だしの部分しか、覚えてないけど。
あとはもう、鼻歌になってしまうけど。
しず、泣かないで。
お願いだから、泣かないで。
じゃなきゃ、俺まで、…泣きそうになる。
拙い歌を最後まで唄い切り、静まり返る公園。
「うわー、不思議!俺、超元気になったーっ!」
音楽の授業でさえ、みんなの前でこんな風に唄ったことはない。
一人で明るく言ってみたけれど、恥ずかしさはピークを迎えている。
泣いてはもう、いない、よな…?
いつの間にか止んだ泣き声に、押し寄せてくる緊張感。
鉄のチェーンを握る力が強くなっていた。
深呼吸を一つしてから、恐る恐る彼女の方に顔を向けたら。
……っ。
脳が、揺れた気がして。
咄嗟に、逸らしてしまった。
あの百貨店の時と同じ、花が綻ぶような、明るく眩しい笑顔。
瞬く間に小刻みに鳴り出す、モールス信号のような鼓動。
身体を包み込む、癖になるほど心地の良い、あの時の高揚感。
この不思議な現象に困惑しかできなくて、でも胸の奥は怖いくらいに煩くて。
…一目散に、逃げた、のに。
最初のコメントを投稿しよう!