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「待ってっ!お願いっ、待って…!」
後ろから聞こえる、しずの必死な叫び声。
さっきまで俺が追いかけてたのに。
なんで今、追いかけられてるんだ…。
あんな醜態を晒しておいて、合わせる顔なんてもちろんない。
ちっぽけなプライドは更に走る速度を加速させて。
振り向くと、どんどんしずが小さくなって行く。
逃げ切れる。
そう安心した、次の瞬間。
「…きゃっ!」
えっ?
嫌な予感に駆られて、すぐに立ち止まって。
まさかとは思いながらも、おずおずと後ろを見るとやっぱり転んでいた。
気にしていた事なんて一瞬にして消え去って、瞬く間に脳を支配する懸念。
気付いたら、しゃがみ込んでいる彼女のところまでダッシュしてた。
「大丈夫っ?!」
「うん…大丈夫」
「怪我はっ?血はっ?!」
「大丈夫だよ。それより、あの、戻ってきてくれてありがとう」
「え?」
こんな近距離で、しかも話すのも初めてなのに。
痛さを堪えて、無理やり笑顔をつくる彼女のおかげで緊張する余裕もなかった。
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