動き出した秒針

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「羨ましいって、どこが?」 「んー、分からん」 「なんだよそれ」 「でも俺が出会ってきた中で一番努力家だと思う」 「えっ…?」 「それははっきりと言えること、かな」 急にまともな返答が返ってきたものだから、困惑してしまった。 俺がボールから逃げてた時から見て来た亮介だからこそ、そう言ってくれたのだと思う。 「…どうも」 「うん」 恥ずかしさを紛らわしたくて、ぬるくなったはんぺんをかぶりと噛んだ。 お出汁が染みているのに、もどかしくて味がよく分からない。 「でも一番馬鹿だったりするんだけどな」 「はっ?」 …なんだ、この上げて落とす感じ。 元から頭の造りの良い亮介からすれば馬鹿なんだろうけどさ。 「どうせお前の方が頭いいよ」 「いや、そこじゃない」 「え?じゃどこ?」 「一点しか見えないところ。なかなか笑える」 「一点?だから勉強のことだよな?」 「…まぁ、そんなとこ。てかお前、なんかあったの」 「えっ?なんで?」 「最近、練習上の空だし」 …マジか。 自分なりに気をつけていたつもりだったのに。
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