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「…ごめん。次から、そんな事がないように気をつける」
こんなの部長として、失格だ。
もっとしっかりしなくちゃいけないのに。
「いや、別に支障は来たしてないから。ただ気になっただけ」
「…うん」
あれからストーカーの話が、頭から離れなかった。
心配をかけているのだから、理由を言った方がいいのは分かっている。
しかし、しずの事を話すのはさすがに躊躇してしまう。
「…今日さ、ちょっとニュース見て…」
「うん」
「それで、まぁ、ストーカーの事件だったんだ」
「うん」
一体、自分は何を話そうとしているのだろう。
しどろもどろに紡ぐ言葉を、亮介はスポーツ飲料を飲みながら真剣に聞いている。
「ストーカーって、ほら、会いたいからストーカーとかしてしまうじゃんか」
「うん」
「でも相手からしたら、ただのストーカーでしかなくて」
「うん」
その態度に焦りを感じて、考えもなしに声が発されている。
どこに向かって話を進めているのか、全く予測不可能。
「一生懸命頑張ってんのに、気味悪がられたりとかされてさ」
「うん」
「なんか、哀れだなぁって…」
改めて口にしたけど、本当に哀れだ。
いや、滑稽と言った方が適切なのかもしれない。
報われなさ過ぎて、笑えてくる。
…あれ?
じゃ、逆に俺にとって報われるって、なんなんだろ…。
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