動き出した秒針

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「のりちゃんが覗き見しようなんて言うからっ」 母に罪をなすりつけた姉。 「なっ!あたしじゃないわよ!さっちゃんが見たいってっ!」 そのまま、さっちゃんへ転嫁。 「違うわよ、紀子さんが先に言い出したんでしょう」 「そう、のりちゃんなのっ!」 「みんな酷い…っ!」 そのまま母は逃げ、二人は棒読みで"大変"と言いながら走って行った。 毎度のことながら、なんともふざけた小芝居。 残された父は、三人に見捨てられ、呆然としている。 おもむろに顔を戻した彼は、苦く笑って。 「…相変わらず、すごいな」 「本当、勘弁して欲しいんだけど…」 「最近頑張ってるんだろう?みんな嬉しいんだよ」 「…うん」 「もちろん、私もだ」 仕切りに頷き、満足そうに微笑む彼は、厚みのある手で頭に乗せてきた。 撫でられるなんて滅多にされないから、恥ずかしくて少々戸惑ってしまう。 「部活、部長に決まったんだろ?」 「…うん」 「本当、よくやってるよ」 「…ありがと」 学校や塾の先生よりも、父さんに褒められるのが、一番嬉しい。 父さんは、ずっと俺の目標。 彼のような大人になりたい、と切に思っている。
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