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「一年生で奏人のこと好きな子、いるらしいよ?」
「そう」
「すごい可愛いんだって」
「そう」
興味が湧かない話を適当に聞き流し、亮介に借りたコミックに集中しようと試みる。
亮介と二人で昼食を摂っていたはずなのに、最近、灯は隣の席に勝手に座り、こうして俺はまだしも、消しゴムの件が嘘のように亮介にも親しげに話しかけてくる。
友達も多い方なのに、なんでここに座るのかと聞くと面白いかららしいが、昼休憩は俺にとって少ない休みの時間。
出来たら邪魔はしないで頂きたいし、むしろ放っておいて欲しい。
亮介はというと、いつものように灯をいないものだと思って漫画を読み耽っている。
多分、そんなに灯は好きではないんだろう。
「誰か気にならないの?」
「うん、気にならない」
「なんでそんなに興味ないの?」
そもそも誰か知って、どうするんだろう。
とりあえず嫌なことしか浮かんで来ないから、告白だけはして来ないでと思う。
「やっぱり可笑しいよ。ねぇ、本当は好きな人いるんじゃないの?」
入学してから、耳にタコができるほど聞かれたこの質問。
さすがに答えるのも面倒になってきた。
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