動き出した秒針

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無視を決め込み、手元に視線を戻す。 しかし、その言動は裏目に出てしまったみたいで。 肯定と思い込んだ灯は勢い良く立ち上がり、すごい速さで読んでいる漫画を奪われた。 「もう、なんな…」 いつもの我儘にイラっと来て、文句を言おうと顔をあげたけれど、声が途切れた。 強気だった態度が一変、垂れ下がった眉で悲しそう瞳をして、下唇を噛み締めていたからだ。 「どうしたんだよ急に」 「好きな人、…美咲じゃないよね」 「…はっ?美咲?なんで美咲?」 唐突な名指しの質問に、素っ頓狂な声をあげてしまう。 灯は言いたくないのか口を閉ざして、その反応に益々訳が分からなくなる。 「なんで美咲?」 「だって…最近仲良いんでしょ」 「はぁ?」 確かに塾の休憩時間になると、俺のクラスに来るようにはなったけど。 話しかけてきても、ノートをまとめるか問題を解いてるかであまり相手にはしてない。 周りからは好かれてるだの、可哀想だの色々言われている中、それをどう捉えたら仲が良くなったという解釈になるのだろうか。
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