動き出した秒針

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実際のところ、以前に比べて少しだけ好感を持てるようになった。 それは美咲が、驚くほど勉強熱心になっていたから。 塾が終わっても自習室で勉強してるし、俺にやたら分からない事を聞いてきたりもしてる。 彼女が徐々に変わって行くことは、自分のことのように嬉しい反面、しずの事を思い出すとやはり嫌悪感が勝ってしまう。 「…全然、普通なんだけど」 「本当っ?」 軽く頷くと表情がまたコロリと変わり、花が咲いたように灯は笑った。 「でも好きな人、本当にいないの?」 「だーかーら」 漫画を取り返し、怠そうに同じように答えようとしたら。 何故か漫画を読んでいた筈の亮介の見据えたような眼差しに捕らわれる。 …なんだろう、この感じ。 「だから、なに?」 「あ…だからいないって。もう漫画読みたいから、邪魔すんなって」 「はいはい、分かりましたよーだっ」 頬を膨らませてる割に、嬉しそうな灯は廊下へ消えていった。 貴重な休み時間を10分程無駄にしてしまったことに、思いがけずため息をつく。 「さっきなんか言いたいことでもあった?」 「何もないけど」 何か言いたそうに見えたんだけど、気のせいか。 気を取り直して、漫画を読むことに専念した。
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