65人が本棚に入れています
本棚に追加
「家族で過ごすクリスマスが一番だよ。俺、去年友達と過ごしたけどやっぱり家族だなって思ったから」
真っ赤な嘘で、本当に申し訳ない。
クリスマスは盛大に家族で祝うのが、我が家の家訓。
恋人のいる兄貴と優香からすれば迷惑極まりないが、それでも毎年最低でも1時間の強制参加を虐げられている。
そんな家で、俺が友達と過ごせるはずがない。
「そう、なんだ…」
「それに美咲が行かなかったらおばちゃんも大志も寂しいだろ」
「…うん」
あ、れ?
美咲は明らかに落ち込んでいた。
そんなにテンションが低くなるほど、お父さんっ子なのかな。
「おじさん、来ないの寂しいの?」
「そんなんじゃないよ。奏人くんが家族で過ごすなら…あたしもそうする」
脱ストーカーへ、一歩前進した瞬間。
胸中で何度も力強くガッツポーズをした。
踊りだしたくなるほどに浮かれまくり、油断をしていたら。
「奏人くん家はクリスマスディナー、外で食べてるの?」
「いや、家で」
「へー。でも楽しそうだね。あたしもママに頼んで家にしようかな」
「…えっ?!」
呆気にとられた美咲はきょとんとしている。
何か可笑しいことでも言ったのかと聞きたげな顔。
…可笑しいのは、もちろん俺だけれども。
家に居られるのが、一番困るんだってばっ!
最初のコメントを投稿しよう!