哀しい、粉雪

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「どんなチョイス…?」 お目当ての新刊コミックを片手に、包装してくれる店員の手元を覗く海斗。 興味津々だった表情が一気に強張り、怪訝そうにおずおずと俺を見つめる。 「…うるさいな」 「誰にあげんの?」 「…母さん」 「え、優しっ!親にクリスマスプレゼントなんてあげたことないんだけどっ!」 「俺も今年から始めた」 「おばちゃん、絵とか書くのな」 「うん…そんな感じ」 関心する二人に、後ろめたさを感じる。 母さんが絵を描いたところなんて生まれてこの方、一度たりとも見たことがない。 今年のクリスマスにプレゼントをあげるのは本当のこと。 ただ父さんにはあげるのはメガネケース、さっちゃんと母さんはお揃いの…ひざ掛けだ。 「いよいよ明日かー、早ぇー」 店を出るなり海斗は、両腕を広げて外の空気を肺いっぱいに入れていた。 今日がもう23日なのだから、本当に時間が経つのは早いと思う。
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