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「ああ!俺の両想いが待ち遠しいぜっ!」
興奮した海斗は飛び跳ねるように立ち上がり、地団駄を踏み始める。
さっきまで抱いた尊敬の念は、早々に下降線をたどる。
「そんなに両想いになりたいの?」
「好きならそう思うのは当たり前だろ!」
「へー…」
…彼女も、そう思っているだろうか。
両想いになりたいと、海斗のように、熱望しているのだろうか。
胸の奥が、軋み始めて。
また逆戻るように、くすんでいく。
「叶った時の喜びは半端ないと思うわぁ」
「そっ、か」
重たい漬物石が体内に落ちたみたいに、急にずっしり重たく感じる。
心臓部から握り潰されるような痛みが広がり、笑うのが辛い。
突然、微かな風が左頬を横切り、黒いコートが動いたのを目の端が映す。
「そろそろ帰るぞ。じゃな」
「ええー」
ゴミの入ったコンビニ袋をぶら下げた亮介は、俺にそう言って歩き出して。
同じ方向の海斗は文句を垂らしながら、彼の後を追いかけた。
助かったと、安心せずにはいられなかった。
多分、あのまま聞いていたら、顔に出ていたと思うから。
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