哀しい、粉雪

8/29
前へ
/29ページ
次へ
運が良いことに、今日は塾。 こんなわけの分からない感情に、気を取られてる場合ではないと奮い立たした。 「奏人くんっ」 おしゃれな彼女は今日も華やかなフリルワンピースを身に纏い、俺の席まで駆け寄ってきた。 美咲がやってくるのを、こんなに待ち遠しいと思ったことがあっただろうか。 さっそく聴取を始めなくては、と思ったら。 俺の机に視線を落とした美咲は、首を傾げながら俺に話す間を与えずに口を開いた。 「今日は予習しないの?」 「あー、美咲が来るまで軽く見たから大丈夫」 「…そうなんだ」 何故か嬉しそうに微笑む彼女に違和感を覚えたが、時間は限られている。 さっさと本題に入らなねば。 「ところで」 「奏人くんってさ」 またしても、先手を取られる。 そして言っておいて、どもり始める。 ああっ!じれったい!…と心の中で叫んでも、平然を装っておかなければならないのが苦しい。 時間ないんだから、早く言ってくれ…。 「…クリスマス、何か予定ある?」 「へっ?」 「あっ、いや、何してるのかなーってちょっと気になってっ」 …うそ。 まさかの、以心伝心…? 「俺もそれ、美咲に聞こうと思ってたんだよ」 「えっ?!」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加