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運が良いことに、今日は塾。
こんなわけの分からない感情に、気を取られてる場合ではないと奮い立たした。
「奏人くんっ」
おしゃれな彼女は今日も華やかなフリルワンピースを身に纏い、俺の席まで駆け寄ってきた。
美咲がやってくるのを、こんなに待ち遠しいと思ったことがあっただろうか。
さっそく聴取を始めなくては、と思ったら。
俺の机に視線を落とした美咲は、首を傾げながら俺に話す間を与えずに口を開いた。
「今日は予習しないの?」
「あー、美咲が来るまで軽く見たから大丈夫」
「…そうなんだ」
何故か嬉しそうに微笑む彼女に違和感を覚えたが、時間は限られている。
さっさと本題に入らなねば。
「ところで」
「奏人くんってさ」
またしても、先手を取られる。
そして言っておいて、どもり始める。
ああっ!じれったい!…と心の中で叫んでも、平然を装っておかなければならないのが苦しい。
時間ないんだから、早く言ってくれ…。
「…クリスマス、何か予定ある?」
「へっ?」
「あっ、いや、何してるのかなーってちょっと気になってっ」
…うそ。
まさかの、以心伝心…?
「俺もそれ、美咲に聞こうと思ってたんだよ」
「えっ?!」
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