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「あたしが何言うか、大体分かってると思うんだけどさ」
開き直った口調で、俯いてる彼女から春風がシャンプーの良い香りを運んできた。
話そうとしていること。
…今なら、分かる。
何故あんなにも執拗に色々聞いてきたのか。
何故用もないのに俺のところに来るのか。
今なら全部、分かってしまう。
一緒に帰ってるのは、3年になって初めてクラスが離れた灯。
話があるからと、わざわざ部活が終わるまで待っていてくれた。
歩く速度を緩めた灯に歩幅を合わせる。
緊張した面持ちでありながらも、意思の強そうな瞳が俺を捉えて離さない。
「あたし、一年からずっと奏人が好きなの。クラスも離れちゃったし、これを機に言おうと思って」
「…うん」
「付き合う気ないとか、そんなのは無しにしてほしい。あたしを見て判断してほしいの」
「…ごめん」
「なんで?友達に見えないとかはやめて。そんなの、意識すればすぐに変わるから」
一歩も引かない態度の灯をすごいと思う同時に、羨んだ。
こんなにも堂々と自分の想いを口にする強さがあって、ちゃんと相手に伝えられる立場にいる。
…どれも俺がどんなに望んでも、出来ないことだから。
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