夜空、溶けない温度

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「緒沢さん、山本さん。これ、二人の」 細い目が印象的な、背の高いクラスメートの高木くん。 渡しに来てくれたのは、明日に控えた文化祭の模擬店に使う小道具。 うちのクラスは、おにぎりメイド喫茶。 私と有ちゃんは…チラシ配り。 かなりのハズレくじを引いてしまったのは、私だった。 「ありがとう」 「今日は?残れそうか?」 「うん。最終日だし、できるだけ残る」 高木くんは文化祭の実行委員。 放課後ほとんど毎日といっていいほどに残って準備をしていたみんなと違って、私だけ早く帰らせてもらっていた。 でもさすがに最後くらいは、ちゃんと参加しないと申し訳なさすぎる。 「無理はしないように」 「うん、ありがとう」 彼にだけ、軽く家のことを話してある。 多分、他の人なら嘘だとあしらわれるだろうところを、彼はずっとこんな風に気を使ってくれていた。 あまり良く思われていない私にとって、とても有難い存在だ。
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