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「そういうことはもっと早く言ってよー…」
「言ったところでしょ」
「そうだけど…」
なんだか急に食欲すら失せてしまって、今すぐにでも謝りに行こうかと思ったけれど、彼はまだ衣装を配っていた。
あとにするしかないよね…。
ああ…、本当にごめんなさい…。
「で、どうよ高木」
「どうって、何が…?」
「だから男としてアリか、ってことよ」
またそういう話かと、呆れずにはいられなかった。
最近、以前に増して有ちゃんはこの類の質問をするようになっていた。
高木くんは、たっちゃんに少し似てると思う。
あまり笑わないし、ちょっと怖そうに見えるけど、面倒見が良かったりとか。
だから勝手に親近感は持っちゃう、けど。
「普通の同級生だよ」
「…ふーん」
みるみるうちに射抜くような鋭い瞳に変わる。
なんだか見透かされそうで、思わず逸らしてしまった。
できるだけ自然にお弁当箱に目線を移すと、頭上からボリボリと小気味よい音が降りてくる。
「見慣れたら、そっちも可愛いわね」
たくあんを咀嚼している有ちゃんは、納得したように数回頷いた。
褒めてくれているのは、短くなった私の髪型。
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