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あの日から、あっという間に一ヶ月が経とうとしていた。
心は軽くなった。
でもそれは大きな穴が空いて、中身が、ごっそりと抜けたみたいで。
全部が全部、消えてくれるわけじゃなかった。
一人になると、夕焼けを見ると、夜空を仰ぐと。
不意に襲ってくる物寂しさは、こびりついた残骸から派生したもの。
切ない疼きを感じる度に、どこかで安心する。
込み上がってくる熱さを思い出す度、どこかで嬉しくなる。
どんなに抗っても、勝手に思い出しそうとして。
理屈で分かっていても、心は渇望してた。
その都度、いらないとばかりに否定して、拭払して。
…いつしか、"消したもの"が何なのかさえ、分からなくなった。
寂しさ、に浸りたいのか。
悲しみ、に暮れたいのか。
虚しさ、に打ちひしがられたいのか。
苦しみ、を味わいたいのか。
被虐趣味なんてこれっぽっちもないけど、負の感情を求めているのは確かで。
幾度となく自身に問いかけてみても、答えは未だに出ないままだった。
でもおかげで何に対しても、揺らがなくて、考えることもなくなった。
まるで硬い透明な防壁に守られているみたいに。
私は何事にも左右されない、鉄壁の心を手に入れたのだと悟った。
反動なのか、嬉しさや喜びに対して感じ方が鈍くなって。
家と学校の往復を繰り返す生活が、自分の中で益々無機質なものになったけれど。
強くなれたのだから、…それくらいの犠牲は厭わないと思う。
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