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急いで着替えて、トイレを出てから店員さんに彼がいる席の場所を尋ねた。
奥の窓際、という安易な説明を受け、一卓ずつ確認しながら歩を進める。
店内はかなり広く、白と黒の色調をメインとしていた。
赤のソファや緑の観葉植物が、おしゃれな雰囲気を際立たせていて。
あまりこういうお店に馴染みがないため、通路を歩くだけで緊張を覚えた。
…あっ。
頬杖をついて外を眺めているハルさんを発見し、小走りで駆け寄った。
「お待たせしてすいませんっ」
会釈するものの、何故か無言で凝視されている。
しかも真顔、なのだから余計、読めない。
「あ、あの…?」
「いやー、制服姿ってそそるなと思って」
「へっ?」
「後でホテルでも行く?」
「っ?!」
さらりととんでもない事を発した彼は、好青年のような爽やかな笑顔。
衝撃のあまり、拒絶しようにも息が詰まり、口をぱくぱく動かすだけで精一杯で。
微動だにしない身体に、暴れる心臓の振動がじわじわと広がっていく。
「ぷはっ!」
…からかわれた、と気付いた一秒後。
豪快な大笑いを耳にしながら、改めてこの人はまともではないと痛感した。
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