呪われし残酷な魔術

15/22
前へ
/22ページ
次へ
「なんでしたの?」 「本当に虚ろ覚えなんですけど…その子、お金持ちだったんです。それで…欲しいもの、なんでもあげるって言われて。すごく、惨めに感じちゃって」 あの頃は、まだ幼くて。 我慢をすることが、今よりも苦痛に感じてた。 でも表になんか出せなくて、毎日必死に平然を装って。 生活に対する不満と嫌悪が募りにつのっていた時だった。 妬ましくて、腹立たしくて。 すごく、ひどいことを言ったと思う。 思い出せないのは、忘れようとしたからだ。 何もなかったように、その記憶ごとを抹消して。 あんな醜い自分なんて存在しないと思い込みたかった。 …隠蔽している時点で、歪みきっているというのに。 「どうやって出会ったかとかは全然覚えてないんですけど、…嫌な思い出です。…恥ずかしくて」 「反省してる時点で偉いと思うけど?」 「そう、ですか…?」 「うん」 変わったところなんて何一つないのに。 どこか、違和感を覚える。 言い表せない何かに催促されて、自ずと発していた。 「ハルさんは…こういう経験、したことありますか?」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加