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「やっと見つけたし…」
目の前まで走って来たのは、まさかの高木くん。
突然の登場に、驚きで硬直してしまう私を見るや否やギョッとして。
「なんで泣いて…」
「あ、…その、ちょっと気分悪くて…」
「えっ?気分悪いって」
言葉を詰まらせた彼の目が、大きく見開いたのが分かった。
固まっている彼の視線は私ではないところに向けられている。
おずおずとそれを辿っていくと、知らぬ間に戻って来たハルさんだった。
「久しぶりだね」
えっ…?
嘘くさい笑顔を浮かべて、挨拶したハルさんに呆気にとられる。
高木くんは驚きを隠せないみたいに、目を丸くしたまま身じろぎしない。
この二人って知り合い、なの…?
「ちょうど良かった。この子の荷物、持ってきてくれない?」
「え…?」
鞄なんて言われるまで全く気にも留めていなかった私は、高木くんと声が被ってしまった。
彼はというとすぐさま不可解と言いたげに眉間に濃い皺を寄せる。
責め立てるがごとく、厳しい目つきで私を見て。
途端に今、サボってしまっていることを自覚した。
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