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あれだけ迷惑をかけておいて、何をしているんだと罪悪感に駆られる反面。
彼が奏人くんと仲が良いことを思い出して、余計、逃避したくなる。
凝視する彼にいたたまれなくなって、俯いてしまった。
こんな顔でも、戻らなくてはいけないのは分かってる、けど。
またあの二人に遭遇してしまったら、と思うと、億劫になる。
「…何がしたいんですか」
私に、言ってるものだと思った。
神妙な面持ちでハルさんにそう問い詰める理由なんて、全く想像がつかないからだ。
「泣いてる子を家まで送り届けようとしてるだけだけど?」
何食わぬ顔で返した答えに高木くんは一層、表情を険しくなってしまった。
…なんだろう、この二人。
仲はあまり良くない、のかな?
「緒沢さん、この人」
「それ言ってメリットあんの?」
高木くんが何を言いたかったのかと思案するよりも。
彼を遮ったハルさんのガラリと変わってしまった声色に、意識を持って行かれた。
『世界で自分が一番不幸だとか思ってんでしょ?』
あの時と同じ、冷たくて突き放す声。
見なくても、分かった。
彼は今、高木くんに卑しむような顔を向けているはずだ。
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