54人が本棚に入れています
本棚に追加
「校門前で待ってるから 、荷物頼むね」
黙り込んでしまった私と高木くんなど構うことなく、いつものような戯けた口振りに戻っていて。
彼は本当に多重人格なんじゃないかと、疑わずにはいられなかった。
荷物を取って来てもらうなんて、申し訳なさすぎると止めようとしたが、高木くんは早々と踵を返して行ってしまった。
「行こ」
「え…でも…」
「取って来てくれるから」
そう言って、ハルさんは歩き出して。
腑に落ちないながらも、教室に戻る勇気もない私は、渋々後を着いて行った。
「…高木くんと知り合いだったんですね」
「顔見知り程度だけどね」
「え?でもその割に…」
「なに?仲悪そうって?」
何故、自分の口はこうも緩いのだろう。
口角を上げた彼は、もちろん全部見透かしていた。
「えと…悪そうっていうか、その…はい…」
「はは、素直」
「すいません…」
「一方的に嫌われてんのよ。別に何もしてないのに」
高木くんが安易に人を嫌うイメージなんてない。
宇宙人のことだ。
もしかしたら真面目な彼の癇に障るような事を、無自覚に言ったのかもしれない。
「…で?今日は何があったの」
横目で覗く瞳が、急に鋭くなって。
咄嗟の嘘もつけずに、どもってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!