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言われた通り、駐車場に停めている彼の車を見つけて、恐る恐る乗車した。
懐かしさを覚えるグリーン系の薫りに包まれた車内に、一人でいるのが朦朧とした思考ながら不思議に感じた。
暫くして、ハルさんは私の鞄と制服の入った紙袋を持って戻ってきた。
「はい、どーぞ」
「本当に、すいませんでした…」
「お大事にって言ってたよ」
高木くん、本当に優しすぎる…。
今更になって、またしても多大な迷惑をかけてしまったを実感して、後ろめたさが次から次へとのしかかって来る。
「どっか行きたいとこある?」
「えっ?」
「ないなら、そのまま家に送るけど」
「それは…っ」
こんな顔でお母さんに、どんな言い訳をしたらいいのか分からない。
焦る私を一瞥したハルさんは何も言わずにエンジンをかけた。
「あの、どこでもいいので…その、家はまだ…」
「んじゃ、適当に」
「…すいません…」
…本当、何をしてるんだろう。
ゆっちん達に何も告げずに文化祭をサボってしまって。
高木くんにあんなにもお世話になったのに。
後悔の波に呑まれて、最終的に浮かぶのは、やっぱりあの二人で。
心の中で、また黒雲が渦巻き始める。
何もかもを破棄できたなら、どんなに良いのだろう…。
拭払するように、瞳をギュッと瞑った。
「……♪………」
彼はまた、あの曲を口ずさんでいた。
子守唄のような心地良さを覚えて、次第に意識が遠のいていった。
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