幽霊王子は忘却の彼方

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「髪、ばっさり切ったのね」 「あ…そうなんです」 「…懐かしいわ」 「えっ…?」 ハッと口を噤む永重さんは、すぐに手を引っ込めた。 懐かしいとは、どういう意味なのか。 何故、そんな寂しそうな顔をするのか。 湧いてくる疑問たちを口にしようとした矢先、お姉さんに先手を取られてしまった。 「あたし達ちょっと用事あるから、先行くわね?」 「あっ、はいっ。…引き止めてしまってすいませんでした」 「いいのよ、気にしないで。じゃねっ」 お姉さんに腕を抱かれて横切る永重さんの表情は、やっぱり曇っていたように見えた。 なんで…? せっかく会えたのに、なんであんな悲しそうな…。 おかげで家に帰っても気分は晴れなくて、彼女の顔が頭から離れなかった。 その後、すぐにゆっちんと待ち合わせている近くのファミレスへ急いだ。 平日にも関わらず、店内は家族連れで賑わっていた。 しかし珍しく時間通りにやってきた親友は、それに反して、どことなく浮かない様子だった。 目の前に座る私と目も合わさず、手元のメロンソーダに見つめて、先ほどから無駄にストローでぐるぐる掻き回している。 「なんかあった、よね…?」 「…うん…」 最近、話を逸らされるか黙られるかの経験しかしていなかったせいで、ゆっちんの素直な性格がひどく有難く感じ、感動さえ覚えた。
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