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「あたしが何をしずに隠した?」
美咲さんの彼氏、とはどうしても言いたくなかった。
かと言って、名前を呼ぶ親しいのかと問われるのも困る。
「…2組の男の子と…知り合いだったんでしょ?」
バンッ!
言い終わったと同時に机を勢い良く叩いた彼女は、ギョッとする私など物ともせずに雄叫びをあげた。
「そう!それも言いたかったのよ!」
あれれっ?
思ってたような深刻な反応じゃ、全くないのは…なんで?
「覚えてる?!あたしが中学ん時に図書室で一目惚れしたって騒いでたの!」
「えっ?もしかして、あの"幻の王子様"…?」
「そうそう!」
光が溢れるんじゃないかってほど、目を輝かせているゆっちんはあの時と同じ顔だ。
鮮明に覚えてる、あれは中学二年のいつかのテスト期間中だった。
その時、同級生がストーカーに遭って、心配してくれたたっちゃんが私達を送ると言ってくれなかった日。
図書室の窓から、たっちゃんが練習をしているのをゆっちんと眺めていたときのこと。
『達男には感謝しなきゃよね』
『…うん。本当に』
『あいつ、顔も悪くないし、性格も優しいのに、なんであんな仏頂……』
急に金縛りにあったみたいに固まってしまい、目が怖いくらいに見開いていた。
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