幽霊王子は忘却の彼方

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「あんた、大志が描いた絵が校長室前に飾られてるって知ってた?」 隣で深いため息をついた奥様は、横目で覗き込んできた。 そんなこと、もちろん初耳。 大志くんなら、真っ先に言って来てくれるのに。 なんで話してくれなかったんだろう…? 「いえ、初耳です」 「…そう。さっき同級生の親御さんから電話があって、それで知ったのよ。大恥かいたわ。 めでたい話なのに、なんで黙ってたのかって聞いてもずっと黙ったっきりだし。本当、何考えてんのかしら…」 彼女は独り言をつぶやくように、階段を登って行った。 確かにちょっと可笑しな話だ。 いつもの彼なら、きっと喜んで報告しに来ていたはず。 もしかして最近、様子が変だったのと何か関係している…? 今すぐ聞きに行きたい衝動に駆られるも、奥様がいるんじゃ、どうしようもない。 また明日にでも、とぐっと堪え、泣く泣くお母さんがいる台所に向かった。
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