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「…私、なんかが…ほんとごめ…、っ?!」
突然、引かれた手から氷袋が滑り落ちて。
一時的に、心臓が止まった。
「…そんなこと思ってないから!」
クリーム色の床から鈍い音が鳴った時には、背中から締め付けられる痛さが伝って。
肩を抑える手が小刻みに震えているように感じるのは、気のせいなのか。
せき止めていたダムが決壊したかのごとく、涙点からとめどなく想いが滲み出てくる。
「俺は、……」
吐息混じりの囁きは、静かに耳元に降りてきて。
右頬に当たっている首の熱さが、途切れてしまったその先を問うことを躊躇わせる。
香る柑橘系の匂いが、鼓動を加速させる。
抱き締める強さに、息さえままならない。
「…ごめん……応え、られない」
一瞬だけでも、"もしかしたら、奏人くんも"、だなんて。
これは、身の程知らずな妄想をしてしまった自分への相応な報いだと思った。
小刻みに窓を打ち鳴らす雨の声が、妙に心地よかった。
引き千切られたような痛みさえ、…掻き消してくれるみたいで。
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