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「奏人くんは…昔から私のこと…知ってるの?」
「知ってたら怖いだろ」
「だって…しずって名前…私が小さい時に呼ばれてたんだよ。有ちゃんも知らないんだよ」
「そうなんだ」
彼はどこまでも、シラを切る。
でもそれが逆にそうだと言っているようしか捉えられなくて。
でもいつから?
いつから私のことを?
「…文化祭に、ゆっちんが…私の幼馴染が遊びに来たの。奏人くんも会ったよね…?」
「………」
返事をしない代わりに、彼は進む速度を上げた。
この言動こそが、全てを肯定していて。
彼が幽霊王子だと想定はしていたものの、改めて思い返してみるとやはり驚きは隠せなかった。
「なんで、うちの中学の図書室に…?」
「…忘れた」
「ゆっちんのこと、知らないって言ってたんだよね?でも、ゆっちんが言ってたの。先に反応したのは奏人くんの方だって」
「そんなの、その子の気のせいだよ」
「気のせいじゃないっ。それって本当はゆっちんのこと、覚えてたからじゃないの?」
ゆっちんだけは、未だに私のことをしずって呼ぶ。
中学の、図書館にいたあの時も、もちろん。
奏人くんが何故、あそこに来ていたのか分からない。
でも、そこで私とゆっちんを見かけて…それで私の事を知っていた、としか考えられない。
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