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慌てふためく私の弁解に耳を傾ける気配などなく、華麗なるスルーをした有ちゃんは話を続ける。
「カッコよかったんだって?今朝の出っ歯達の顔には笑ったわよ」
朝から普段以上に睨んでくるもんだから、てっきり文化祭をサボったせいだとばかりに思ってた。
まさかそんな噂が原因だなんて…。
「でもなんでカッコいいから、機嫌悪くなるの…?」
「あんた、バッカねぇ。妬みに決まってんでしょ。それが小太りの禿げたおっさんなら、今頃あいつら、笑顔で話しかけて来てるわよ」
そういうもの、なの…?
私だって、好きでハルさんに捕まえられた訳じゃないのに…。
「てかそんな伏兵がいたなんて、聞いてないけど」
「違うっ、本当に違うの!ただの知り合いで、抱きついてなんかしてない!本当に!」
「あら、珍しく必死ね」
「もーっ、なんでそんな」
「嘘よ、分かってるってば」
ふっと鼻で笑った有ちゃんは、多分、いや、確実にSだ。
前々からそんなオーラは漂っていたけど、もうこの瞬間、確定した。
「体育、あたしから離れちゃだめよ」
「え?なんで…?」
「なんでも」
急に有ちゃんは険しい顔をするものだから、頷く他なかった。
生徒が行き交う廊下、ざわめきたつ中で雨が窓ガラスをピシャッ ピシャッと打ち付ける小気味好い音が微かに響いてる。
彼女の態度のせいなのか、胸騒ぎを助長するような、そんな音に聞こえた。
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