儚き恋が終わるとき

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ゆっちんに話を聞くと大口を叩いておいて、なんて様なんだろう。 自身の気概のなさをどんなに怨んでも、授業まで刻々と近づいてくる。 「有ちゃん、あの、私ちょっとトイレ行ってくる」 「あたしもついてくわ」 「ううんっ、大丈夫だよ。手洗うだけだし、先に行ってて」 彼女は渋々、といった様子で了解してくれた。 お手洗いは更衣室の隣にある。 本当について来なくても、いい距離だった。 しかし彼女の申し出を断ったことをひどく後悔したのは、トイレのドアを開けてすぐだった。 稲田さん一行、と派手そうな子が3人が洗面台の前を占領していて。 入って来た私を見るや否や、手を止めた永山さんに釣られて、皆こちらに視線を移す。 …最悪だ…。 しかしこのまま踵を返すのは、あまりにも不自然すぎる。 逃げましたと言って、また何を言われるのか分からない。 「あ、ごめんね。どうぞ使って」 立ちすくむ私に、永山さんはやけに親切な口調でどいてくれた。 その言動が逆にすごく不気味で、返す言葉も見つからない。
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