儚き恋が終わるとき

6/19
前へ
/19ページ
次へ
「そういえば緒沢さん、年上の彼氏いるんだよね?」 知らない、可愛らしい雰囲気の女の子が突然、話をふってきた。 違う、と否定する隙も与えずに彼女は畳み掛けるように続ける。 「だったら、他の男にちょっかいかけないでよ」 凍りついた。 あまりもの豹変ぶりに、息すらできなかった。 「高木くんに嘘つかせてるの、バレバレだっつーの」 「サボりたかっただけのくせに」 「てか美咲ちゃんが可哀想よ。使用人なんでしょ?美咲ちゃん家の。本当さ、お世話になってて、人の彼氏に手出すとか考えられないんだけど」 えっ……。 家のことがバレた、という事実が衝撃的過ぎて。 誰が言ってるのか、もう分からなかった。 「でも美咲ちゃんが寛大な子で良かったね。"可哀想だから手伝ってあげたのよ"って、あたしなら絶対言えないわー」 「ちゃんと雇い主、大切にしなきゃだめだよー?女狐雫ちゃん」 きつく肩を叩いて、ぞろぞろと横切る彼女達に何も言い返せなかった。 悔して、悲しくて、胸が張り裂けそうなのに。 美咲さんが何も言ってこなかったのは、そういうことだったのかと納得する自分がいた。 「はははっ」 「使用人とかドラマかって!」 ゆっちん、ごめん…。 今、またどうしようもなく思ってしまってる。 「……っ……」 自分に幸せなんか…こないって。 またしても"同情"されてしまった自分は、…不幸でしかないって。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加