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「そういえば緒沢さん、年上の彼氏いるんだよね?」
知らない、可愛らしい雰囲気の女の子が突然、話をふってきた。
違う、と否定する隙も与えずに彼女は畳み掛けるように続ける。
「だったら、他の男にちょっかいかけないでよ」
凍りついた。
あまりもの豹変ぶりに、息すらできなかった。
「高木くんに嘘つかせてるの、バレバレだっつーの」
「サボりたかっただけのくせに」
「てか美咲ちゃんが可哀想よ。使用人なんでしょ?美咲ちゃん家の。本当さ、お世話になってて、人の彼氏に手出すとか考えられないんだけど」
えっ……。
家のことがバレた、という事実が衝撃的過ぎて。
誰が言ってるのか、もう分からなかった。
「でも美咲ちゃんが寛大な子で良かったね。"可哀想だから手伝ってあげたのよ"って、あたしなら絶対言えないわー」
「ちゃんと雇い主、大切にしなきゃだめだよー?女狐雫ちゃん」
きつく肩を叩いて、ぞろぞろと横切る彼女達に何も言い返せなかった。
悔して、悲しくて、胸が張り裂けそうなのに。
美咲さんが何も言ってこなかったのは、そういうことだったのかと納得する自分がいた。
「はははっ」
「使用人とかドラマかって!」
ゆっちん、ごめん…。
今、またどうしようもなく思ってしまってる。
「……っ……」
自分に幸せなんか…こないって。
またしても"同情"されてしまった自分は、…不幸でしかないって。
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