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差し出された群青色の包装紙に包まれたプレゼント。
ひと気の少ない閑寂な公園で、目の前に立つ女の子はひどく紅潮している。
「今日は伝えたいことがあって…」
タイミングが良いとは、こういう事なのかもしれない。
たどたどしい口調は、いつもの強気な彼女からは想像し難いものだ。
「中学の時、奏人くんが自信つくって言ってくれたよね。あたし、そんな風に言われたことなかったの」
頑張るのも、追いかけるのも、物を盗ってしまうことさえ、全部は好きが故に。
似てるからこそ、理解できてしまう。
共感できてしまうから、責めたてられない。
…遥人は本当に、全てを見抜いていた。
「あたしの事、好きじゃないのは分かってる。我儘なのは自覚してるし…でも頑張って治すから」
俯き加減の睫毛から伸びた影が小刻み揺れて。
滲み出る緊張感に、胸が痛くなる。
「ゆっくりでいいから…その、ちゃんとあたしを見て欲しい」
たとえ、忘れられなくて。
永遠に囚われていたとしても。
『待ってっ!お願いっ、待って…!』
あんな風に、追いかけられる事もなければ。
『おいひー』
あんな日溜まりのような笑顔を向けられる事も。
もう二度と、ないのだから。
これが最善の方法だと思った。
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