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それなのに。
何がどうなって、こんな事になったのか。
どこから、歯車が狂い出したというのか。
「やらかし過ぎだろ」
職員室前で待っていた亮介は、ため息交じりにそう言った。
それもそのはず。
今の今まで、担任と顧問に散々っぱら説教をうけていたのだから。
理由は長谷にボールを故意にぶつけたこと。
反省なんて、一ミリたりともしてない。
むしろ全然、足りないほどだった。
「どうすんだよ、明日には広ま…って、どうしたんだ…?」
どうしたんだろう。
本当に、どうしたんだろう。
「…お前…」
それ以上は、言わないでほしい。
振り絞ったか弱い声が、脳裏に刻み込んでしまった。
腕の中に閉じ込めた感触が、胸奥を蝕んでならない。
目眩を覚えるあの甘い香りが、忘れられない。
『…あ、ありが…と…』
切れ切れながらに紡がれた言の葉に、どれだけ胸を締め付けられたら良いのか。
出来ることなら、もっと、もっと、抱き締めたかったのに。
「なんで泣いてんだよ…」
…恐らく、それは。
彼女しか好きになれない自身を恨んで。
負い目で応えられなかったことを嘆く他ないから。
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