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すぐに俺の意味してることを察した美咲は、血相を変えて腕に縋り付いてきた。
震え出した下がり切った口角は、涙の前兆だろうか。
「違うの、聞いて!あたしお世話とか出来なくて!それで嫌われたらって怖く」
「今更誰がお前のこと信じるんだよ」
「ちが…っ!本当に違うの!お願いだからこれは信じ」
「触んな」
振り切られたショックが大きいのか、口を開けたまま立ち尽くす。
やっぱり溢れた液体は紅くなった眼球を覆い被さり、丁寧に塗られたマスカラを微かに膨張させる。
苦痛を主張する嗚咽音がひどく癇に障り、苛立ちしか募らない。
「ごめんだけど、一生好きになれない」
ぱっと顔を上げた美咲は、化け物に遭遇したかのような表情をして。
弱々しく再び腕を掴んできた彼女は、懇願の域に入っていた。
…泣いて解決するなら、こんなに責めてはいない。
ただの八つ当たりでしかないことぐらい、分かってる。
でも、気が済まなかった。
地獄に堕としてしまいたいぐらい、憎く感じてしまうのだ。
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