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「どう?」
「問題ないです」
意外に老けていた担当の先生は、満足そうに微笑んだ。
言い難い解放感眩しい日差しに包まれて、今朝、包帯を取った。
瞼に瘡蓋の痕が多少残っているぐらいで。
視力も事故前から衰えることはなく、予定通り、明日退院することになった。
「今日、誕生日なんだって?」
「あ、はい」
「退院日、早めたら良かったね」
「…大丈夫ですよ」
しずだと分かってから、すぐに理由をつけて伸ばしてもらったのは俺自身。
しかしよくよく考えたら、この時期は世間でいうお盆。
案の定、帰省すると教えてもらった時は、かなりガックリしたものだった。
母さん達は昼過ぎに軽くお祝いをしに来てくれて、すぐに父さんの実家に向かった。
毎年、どちらかの祖父母の家で誕生日を過ごしていた俺にとって、今年は初めての一人。
寂しさなんて、もちろん感じない。
むしろ、助かるとさえ思った。
彼女はあの日から、来ることはなかった。
いつから行っているのかも分からないけれど、美咲が昨日までずっと通い詰めていたところを見ると、謝罪という任務が最後だったのだろう。
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