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昨夜から浮ついては、また沈んでを繰り返した、 この二週間足らずの日々を思い起こしてた。
多分人生で、一番楽しくて、嬉しさで満ち溢れてて。
同時に一番苦しくて、嫉妬と絶望が鬩ぎ合ってた。
何処にも辿り着けずにいる自分が、これからどうなるのか見当もつかない。
でもある一つの区切りになったんじゃないかと、少しだけ前向きに考えられるようになったのは、きっと活路を見出せずにはいられなかったのかもしれない。
「…いてて」
包帯の留め具が先ほどから髪を引っ張ってるような不快感に耐えきれず、洗面所へ走った。
薬を塗っているからと軽く巻かれてしまったが、薄っすらと見えるせいで、もどかしくて心地が悪い。
後頭部の金属を緩めながら、このまま取ってしまおうか躊躇する。
コン コン
…やばっ。
慌てて外しかけた包帯を元にした。
それはノックしているのが、いつも世話をしてくれている看護婦さんだと疑わなかったから。
だから、扉を開けた時。
「誰ー………」
違う部屋に入ってしまったのかと錯覚に陥ってしまった。
…絶対、これは見間違い。
ガーゼが幻覚を織り成しているんだ。
コン コン
しかし、独特の合図は空気を伝って静かに響く。
まるで、"間違いじゃないよ"と告げているみたいに。
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