揺蕩う、光と闇-2

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「なんで今日…」 目の前に立っているのは、紛れもないしず。 帰省してるはずなのに。 いや、その前にもう来るはずがないのに。 【今日は聴いて欲しいものがあるんだ】 「…聴いてほしいもの?」 帰省する時間を変更したらしい彼女は、ベッドの上にこともあろうか、持ってきたおもちゃの木琴を置いた。 唐突すぎる出来事の数々を受け止めきれず、今から何が始まるのかと思案する間も与えず、小さな手で握られたばちはゆっくりと木板に降りる。 ポン ポン ポン ポン …すぐに、聴き取れてしまった。 幼少期、この曲を耳にする度に睡蓮の葉を跳ね上がる蛙が浮かんで来てた。 捻くれていたせいで、皆が好きだと言っていたこの曲を毛嫌いしていた。 その認識が変わったのは、間違いなくあの時。 『このまえ、僕の誕生日にこっそり『キラキラ星』うたってくれたんだぞ』 …なんで? 嫌いなんじゃないのか? これも美咲に頼まれたから? 無作法だから、尋ねなかったんじゃない。 しきりに沸いてくる疑問よりも。 演奏してくれている音楽よりも。 微かに映る彼女の伏し目がちの瞳に、噛み締めて一段と朱に染まる唇を釘付けで。 身体の芯が燃え滾るように熱くて、ついには逆上せてしまったのか。 …ガタッ! 何もかもが。 衝動、だった。
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