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録音された声が、容赦なく脳内で轟いて。
渦まいた自責の念に微動だにできない。
追いかけなければ。
すぐにでも謝らなければ。
しかし、意志と行動が伴わない。
取り返しのつかない事をしたのは、自分なのに。
傷付いたのは、彼女の方なのに。
しずに、嫌われた。
確固たるその事実に胸を躊躇うことなく潰して、息を吸うこともままない。
何を血迷って、あんな事を。
わざわざ祝いに来てくれたのに…。
欲に塗れた言動をとってしまった自身に悔恨を覚えたところで、痛みは助長する一方。
今度ばかりは、修復もできない。
ついてるはずの蛍光灯の明かりも次第に暗く感じる。
自分の残された歩むべき人生を反映してるみたいで。
本気で、死にたい、かも。
コン コン
えっ。
途端に咲いた期待の花は、振り向いたと共に違う驚きに襲われる。
白の柄Tシャツに、黒のカーゴパンツ姿の長身の男性。
「なんで…」
戻ってきたと思っていた彼女ではなく。
開けっ放しにした扉の横に立っていたのは、遥人だった。
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