揺蕩う、光と闇-2

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予想だにしなかった内容に、胸を衝かれて。 何から、どこから、詰問したら良いのかも分からない。 「…聞きたい、よ」 「びっくりするくらい、何回も出くわしてんのね。んで毎回泣いてんのよ。理由がいっつも恋愛が原因」 聞いて平気でいられるわけがないのに。 好奇心なのか。 持ち合わせていないはずの被虐性ゆえか。 「例えば…?」 「好きでどうしようもないとか、抱きついて恥ずかしいとか?」 覚悟してなお、鈍器で殴られたような激痛が心臓から全身へ駆け巡る。 耐え難い辛さに息が詰まって、力が抜けて行くのが分かる。 「こないだ会った時にあの男といたんだけど。それのこと問い詰めてたよ」 「えっ、それってもしかしてバレてるってこと?!」 「いんや。聞いてたぐらいだし、知らないでしょ。んでどさくさ紛れに取ってきたってわけ」 複雑な心境だった。 綯い交ぜになった、気付かれてなかった安堵と忘れられてしまった虚無感。 そして何より無表情と会っていた、そんな当たり前の事を改めて思い知らされて。 「これ、なんでしずが?」 傷口に塩を塗り擦られた気分を必死に紛らわそうとする。 組んだ足で頬肘をつく彼は、考える素振りもなく即答した。 「美咲ちゃんが盗ったんじゃない?」 「え?…美咲?」 「それ以外にあの子が持ってる理由がないっしょ」 もしかして、口論になったあの時に? でもそれなら失くした日時と合致する。
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