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「てか、気持ち悪いって言われたんだよね」
「え?」
「何も知らないフリしてんの疑われちゃって。かなり嫌そうな顔で釘刺されたわ」
「…なにを…?」
「影で自分のことを知ってる人がいるのは、気持ち悪いって。結構可愛がってたのに、なかなかショック。はは」
苦笑を浮かべた遥人は、心なく俺を崖に突き落とした。
…何故、一番大切な事を忘れてしまったのだろう。
今まで何よりも引っ掛かっていたことなのに。
『ストーカーって、あれだよね?付き纏う人だよね?』
『…なにそれ…怖い…』
彼女が優しくしてくれたのは、あくまで何も知らないからだ。
どこから、赦してくれると。
何を根拠に、受け入れてくれると。
…荒唐甚だしい。
相談にのっていた遥人ですら、そんな態度をとられたのならば。
勝手にキスをした大嫌いな男が、実は長年のストーカー。
しかも執拗のあまり、恋路まで邪魔をしていたと聞かされたら彼女はどうするのか。
…ハ。
自嘲の笑いが自ずと洩れる。
初めから一縷の望みすら無かったのに。
俺は一体、何を勘違いしていたのだろう。
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