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「バイト、始めたんだってな」
「うん、とんかつ屋さんでね。すごく美味しいからまたゆっちんたちと食べに来てよ」
「おう」
会話はこれで途絶えてしまった。
『あいつ全部断ってんの。それって、しずが原因なんじゃないかなーって』
ゆっちんの戯言のせいで変に緊張してしまい、室内のこもる熱気に促されて喉がカラカラに渇いてる。
買ってきたお茶を飲んでも、潤わないのは心理的要因だからだろうか。
「…あれから、どうなんだ?」
「えっ?」
「こないだ泣いてたやつ」
…そうだった。
ゆっちんの話ばかりに気がいって、泣いた事なんて頭の中からすっ飛んでしまっていた。
「…あの時はほんとごめん」
「気にすんな」
「えと…あれから…フラれたの。ちょっと前に」
「フラれた…?」
「…うん」
塞がりそうだったかさぶたに亀裂が入り、鮮血が滲み出てきたみたいだ。
じくじくとした不快な疼きと、吐露したことによってつかえが取れた気分が螺旋状に絡み合っている。
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