声なき海姫と泡沫の想い

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「…たっちゃん、知ってたの?」 罰が悪そうに目を合わさない彼の結い上げられた口の端が微動した。 それに並行して、暖房による身体の火照りが顔にじわじわと集中していく。 「ゆっちん…?」 「…ああ」 はじめて、ゆっちんを恨んだかもしれない。 過去の想いを触れられた場合、どうしたら良いのかなんて判るはずもないけれど。 長年突っかかっていたものは、今だに胸底に眠っているのは間違えようのない事実で。 「…なんであの時、避けてたの…?」 どこから出て来た勇気なのか自分でも不思議なくらい。 きっとそれほど、気掛かりだったのだろう。 口をつぐんだまま、無言になった彼の眉間には濃い皺が刻まれていた。 やはり聞いてはいけなかった、と後悔の念が頭を過ったとき。 「…どう接していいか、分からなかったから」 今まで幼馴染としか見ていなかった相手なだけに、戸惑いも大きかったはず。 あの時、彼も彼なりに色々悩んだに違いない。 本音を探り出すようにゆっくりと言葉を並べていくたっちゃんは、私を傷つけまいと思案しているのが容易にわかった。
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