55人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんか…ごめんね」
「謝んな、…嬉しかったから」
二年もの歳月を経てもらった返事に、なんとも形容しがたいもどかしさを覚えた。
もう好きではないけれど、一抹の寂しさも拭えない。
うっすらとした陰りを感じながらも、どうこうしようとは思わない。
身を引きちぎられるような激しい痛みを伴う失恋もあれば。
こうしてほろ苦さを残してゆくものまであるのだと悟る、普段より少し大人びた自分がいた。
"世界は色で溢れてる"
その言葉にとても救われたことを、私は伝えていない。
言うのはもう、今しかない。
「私ね、あのプレゼントにすごく励まされたの」
仄かに息づいていた淡い想いも、次第に薄らいでいく。
密かに感じていたわだかまりも、とっかかりも、徐々に消えてゆく。
「だから、ありがとう」
声にした途端、不思議なくらいに心が軽くなった気がした。
きっと自身の中で、綺麗にリセットできたのだと思う。
しかし晴れやかな気持ちに浸る私と相反して、たっちゃんの瞳が微かにぐらついて。
黙ったまま、射抜くような彼の眼差しにじりじりとした焦慮に駆られた。
「…それなら、良かった」
最初のコメントを投稿しよう!