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顔を向き合わせることなく、早急に鞄からペットボトルの飲料を取り出したたっちゃんに違和感を覚える。
しかし疑問をぶつける手前で、視界を掠めた彼には似つかわしくない、可愛らしい光沢のある白い紙袋に意識を持って行かれた。
「たっちゃん、それって…」
「ああ、…クリスマスプレゼント」
「えっ、誰にっ?」
珍しく動揺しているのか、目を見開いた彼は身じろぎしない。
ゆっくりと横目で私をみて、何か言いたげに喉仏かわずかに上下する。
「…渚」
渚ちゃんは、彼の二つ年下の妹さん。
クリスマスプレゼントをあげた話なんて今まで聞いたことがなかったから本当に意外だった。
「たっちゃん、渚ちゃんにあげるとか初めてじゃない?」
「…たまには、な」
「絶対嬉しいよっ!」
たっちゃんと似て物静かではあるけれど、とても優しい子だ。
控えめに笑う可愛らしい姿が目に浮かんで、こっちまで嬉しくなる。
「何にしたの?」
「…マフラー」
「これからの季節にぴったりだね」
「ああ。冷えて欲しくないから」
「渚ちゃん、すごく喜ぶよっ!」
「…だといいな」
気恥ずかしいのか、始終、俯き加減で呟くような声色だったけれど。
垣間見えた妹思いな兄としての優しい一面を頬が緩む。
今思えば私は、彼のお兄ちゃんっぽいところに惹かれていたんだ。
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