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…そうだった。
確かめなくては、と何度も思っていた。
忘れてはいけない、とても大切なことだった。
それを今の今まで、念頭になかった自身の脳は本当にポンコツなのかもしれない。
「たっちゃんにずっと聞きたいことがあるだけど…」
「なんだ?」
「奏人くんと…知り合いだった?」
たっちゃんの消しゴムを何故、奏人くんが持っていたのか、未だに解明されていなかったのだ。
細い目が見開いたのを、はっきりと捉えて。
静かに離れていく手が、図星をつかれている証拠に思えた。
「…なんでだ?」
「夏休みのとき、私がたっちゃんの物かって聞いた消しゴム…奏人くんの物なの」
「あいつの…?」
…あ、れ?
驚きを隠せない、予想に反した彼の反応に私も困惑してしまう。
「奏人くんが持ってたの。だから、二人は繋がりがあるんじゃないかって…」
「…俺は、ない」
「え…?」
聞き逃しては、なかった。
しかしその返答がどうしても意味深で、引っかかるものがあって。
懸命に待つ私の視線から一瞬目を逸らした彼は、再び答えた。
「俺は、ない」
一言一句間違えずに、といった口調が益々、私の見解を不可解の渦に沈めてゆく。
…これは、どういうことなのだろう。
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