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「ヒレカツにロースカツなっ!」
素早く、かといって乱雑では決してない手捌きで大将さんは盛り付けられたお皿を滑り込ませた。
お盆に乗せたと同時によそったお味噌汁と白ご飯を次々と置いていく女将さんのふっくらした真っ白な手。
「じゃ、1番さんお願いね」
「はいっ」
油でキラキラ輝くきつね色に揚げられた看板メニューや湯気たつ白味噌の良い香りに胃がぎゅっとなるのは相変わらずだけれど。
狼狽えていたこの一連の共同作業も慣れれば、楽しく思えるくらいだ。
新居から徒歩15分もない今のとんかつ屋さん。
有ちゃんと一緒に薬局のバイトをと考えていたが、やや遠い距離にお母さんは夜道が心配だとあまり賛成をしてくれなかったのだ。
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