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「ただいまー」
流し台の流水音がキュッと止まり、ひょこっと玄関横の台所から笑顔での"おかえり"が出迎えてくれた。
「疲れたでしょ?」
「ううん、今日も楽しかったよ」
「あら、またもらってきたの?」
「うん」
取り出したタッパには、作り置きをして売れ残った、美味し過ぎる煮物やポテトサラダ。
食べきれないといつも分けてくれ、おかげで食費もかなり浮いている。
「いつも本当に悪いわね…」
「またなんか持って行くよ」
「ええ、そうしなさい」
お母さんは美咲さんの家をやめてから、また家政婦をしている。
長年家政婦しかしたことがないからと、その類の紹介事業所に求職登録をした次の日に働き口が決まったのだから運が良いのか、それだけ需要があるというのか。
掛け持ちしているお宅はどれも小さいお子さんを抱えた共働きの家庭。
子守りに悪戦苦闘しているみたいだが、毎日刺激たっぷりだと冗談交じりに話すところをみると彼女もまた充実していると思う。
そして初めて知った家政婦業の給与の高さに二人で驚き、自身の無知さを嘆き、想像していた以上の余裕ある生活を送っている。
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