声なき海姫と泡沫の想い

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「そういえば明日よね?達男くんに会うの」 「うん。夕方の休憩中、ちょっとだけだけど会ってくるよ」 引越しが決まってからすぐにゆっちんに報告をした。 喜んでくれた彼女がたっちゃんに話さないはずがなく、先日、会えるのかと彼から連絡が入っていた。 昼終わりと共にお店は一旦準備で閉店する。 その時間に会いに来てくれるらしく、最寄りの駅前で待ち合わせていた。 「…達男くんのことはもう好きじゃないの?」 「っ?!」 冷蔵庫にタッパを入れていた私は、突拍子もない問いかけに勢い良く後ろのこたつに座る彼女へと振り返った。 なんで知っているのか、と単刀直入に聞くべきか。 なんでそんな急に、でワンクッション置くべきなのか。 「小学校から好きだったじゃない」 お母さんにはそう映っていたんだと思う反面、私のあの恋は小学生からだったのかと第三者として気付かされたような気分だった。 「たっちゃんにそういう気持ちは…もう…ない、かな」 「…人と人って複雑よね」 「え?」 「想う側と想われる側に分かれるでしょう?同じような人を好きになると、矢印が向き合いにくくなるっていうか」 ああ… すごく、わかるな。
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