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「…開けてみて」
「…いいの?」
「うん」
リボンを解き、包装紙を破けないようにテープを剥がして行く。
中にある真っ白な箱の蓋を開けて、目の飛び込んできたのは、木製の小さなグランドピアノだった。
取り出そうと掴んだ瞬間、屋根部分がパカッと開き、木琴と鈴が掛け合わせた音が鳴り始める。
オルゴールなんだと呆気にとられている間に奏でられる、耳慣れた曲調にまた息を呑んだ。
「これ…キラキラ星……」
「…うん」
誕生日の時、お母さんに歌ってもらった。
だけどあの時の場面を彷彿させられて、心が軋むように痛かった。
でも今は、紡がれた優しく不思議なこの音色に胸が熱い。
嬉しいのに、とてもとても嬉しいのに。
…泣きたい衝動に駆られてならない。
「あの時…誕生日の日は、ほんとごめん」
「え…?」
鼓動を打つ心臓が、ドンッと膨した気がした。
極力その話は避けようとばかりに思っていたのに。
「…私だって気付いてたの?」
「……………」
「い、いつっ? いつからっ? じゃあのキス………」
その単語を発していた自分がひどく恥ずかしく感じて、すかさず口を結ってしまった。
奏人くんもスッと顔を背けたけれど、火を噴いてしまいそうになるほど赤くなっている。
…奏人くんは、気付いてた。
あのキスは身代わりなんかじゃなくて、私に対するものだったのだと。
そう思った途端、堪えていたものが躊躇いもなく溢れてしまっていた。
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