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似てないどころの騒ぎではないが、それは考えても意味のないこと。
遺伝子の不思議、と片付けるほかならない。
それよりも、だ。
「…なんで黙ってたんですか」
「なに、あいつのこと?」
「…………」
「俺が勝手に言うのは可笑しくない?それは不公平だと思うけど」
確かにそうかもしれない。
でも知っていれば、とどうしても思わずにはいられなかった。
「あいつも悩んでた時だったのよ。軽はずみに君に期待もたせることして良い事なんかなくない?そんでまた付き合っちゃったもんだから余計に、ね。これでも俺なりに結構考えてたんだよ?」
困った風に笑った彼が、そこまで考慮してくれていたとは考えが及ばなくて。
責める感情を抱いてしまった自身の浅薄さを思い知らされた気分だった。
「…以前、欠陥が浮き彫りになるから私のことが嫌いって言ってましたよね?あれ…どういう意味なんですか?」
欠陥とは、何なのか。
それが私と、どう関係しているのか。
これについてはどう思案しても答えが見出せなかった。
女将さんに出された熱いお茶を啜りながら、瞳だけが仰ぎ、何やら考えているようで。
返答を待つこと数十秒、こちらに視線を移した遥人さんはおもむろに口を開いた。
「全然覚えてないや、ははっ」
……は、い?
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